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お待たせいたしました、終焉番外編第3話でございます。
でもその前に、実は本編の方が2話ほど(長さ的には4話分くらい)進展しているので
リンクを張っておきますんだぜ。
町長、船長、お疲れさまでした!
次回はもうしばらくお待ちください!(← 一番暇人なのに一番スピードに期待できない人


第一話 『演説する神、冷めてる子』(南京豆売り事情)
第二話 『話の相手』(報告書)
第三話 『楽しい時間を』(でぃすとり)
第四話 『居場所と行き場所』(報告書)
第五話 『ブラックバード』(でぃすとり)  

第六話 『爆雷作戦 イー87号』(南京豆売り事情)

第七話 『直列、並列』(前 )(でぃすとり) NEW!!
第八話 『闇の帝都で笑うヤツ』   (南京豆売り事情)NEW!!



あと番外編InR-Fver.リンク。
とうとうタイトルと章ごとの名前がつきました。(おせえよ
『Q-say-Machines』

01- Switch on

02- STG

それではどうぞ。

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Q-say-Machines
-03-  SIM




第115ウォーカー師団64小隊は、深い森林の中を、ゆっくりと前進している所だった。


防衛軍の古い習わしとして、ウォーカー師団のナンバーは100から始まることとなっていた。
それはウォーカーの正式名称が『100式無輪駆動重戦車』だからであり、
反重力ユニットの力で常に数センチ浮き上がっているこの兵器は、
その歩みの遅さと、地につける足を持たない故に、皮肉を込めて『Walker』という名で呼ばれるのだった。

16台のウォーカーと、それに乗り込む48人の兵士がいたはずだったこの小隊には、
今は7台と14人しか残っていなかった。
戦場まで兵士と兵器を運ぶ『究極に安全な箱船』として作られたウォーカーは、
敵軍のどんな攻撃も通さない無敵のバリアと装甲を持っていたが、
その重さのため、文字通りひっくり返されてしまったときには、手も足も出ないのだ。
だから魔王軍は、それまでのように炎や雷の魔術で戦うのを止め、
ウォーカーの真下に氷の山を発生させる呪文を使った。
情けなく上下を逆さにして、腹を見せながら浮かぶウォーカーは、
その反重力ユニットの不具合のせいで、少しずつ地面へ埋もれてゆくしかなかった。
そしてウォーカーの唯一の出入り口は、『上部』にしかなかったのだ。
また、運良く横転したウォーカーから、水に怯えたアリのように兵士が飛び出してきた時には
彼らを待つのは炎や雷の魔術だった。

敗走する64師団を、魔王軍は容赦なく追いかけた。
翼の生えたサルのような魔物が、群れをなして空から彼らを狙う。
魔物は爆発を起こす呪文を唱え、それに巻き込まれて貴重な1台がひっくり返った。
兵士の一人は「だから、俺はキャタピラの方が高性能だって言ったんだ」と叫び、
同じウォーカーに乗っていたもう一人が「何が『究極に安全な箱船』だ、ただの箱じゃねえか」と唸った。
他の機体の砲台から、空へ向けて決死の一撃が放たれる。
しかしサルどもは、それをあざ笑うかのように避けまわり、また呪いの言葉を唱えた。

結局この世界では、『科学』が『魔法』に勝つことはできなかったのだ。

「諸君!」
だが、人はあがき続けた。
「何でありますか、小隊長殿!」
「このままでは、我々はこの無様な棺桶の中で犬死にだ。
 どちらにせよ滅びるのなら、名誉をあの世の土産へ持って行きたくはないか」
「ですが、どうやって脱出するのです!?」
「脱出する必要などない。
 奴らの線香花火などより素晴らしい『科学』の技術を、我々は持っている!
 諸君....
 諸君、 私からの最期の命令だ」
小隊長機には彼一人しか乗っていなかったので、13人の残された部下の顔を、彼は見ることができなかった。
だが、彼の脳裏には見えた。名誉を重んじる科学の仔らが、力強く頷くさまを。

小隊長最後の命令は、「総員、『自爆』!」だった。

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巨大なクレーターだけが残っていた。
木々は一瞬に灰と化し、飛行ザルはおろか、およそ生物とされるものは
何も残っていなかった。
巻き上げられた砂塵と灰が、雨のように降り注ぐだけ。
....いや。正しい向きで地についた、傷ひとつないウォーカーが
クレーターの中心に、ぽつんと残されていた。
そして兵士がひとり。
「.....へへ..... ごめんだね、そんな命令....」
彼は今、13番目の使徒だった。

自分の周りだけ、世界は滅亡したようだった。
反重力ユニットに流れる強大なエネルギーを、ウォーカー内部の燃料エネルギー、
そして武装に直結させ、オーバードライブを起こしたのだ。
燃料エネルギーが、人体に安全なもので出来ている訳がなかった。
外は放射能の嵐かもしれない。
ウォーカーの中にいれば、半永久的に安全だが....
砂塵で覆われた窓から外の様子は伺えないが、地獄のような風景であることは想像がついた。
....『科学』が全てである防衛軍兵士である自分が、地獄なんて言葉を使うのは規律に反しているのだが。

無意識にレーダーを見る....

「!」
たったひとつ、生体反応が光った。位置はこのウォーカーのすぐ近くだ。
「おい!誰か、生きてるのか!」
通信機を手に取り、叫ぶ。
「味方なのか!?なァ、大丈夫か!アンタも.....!」
続けようとすると、
コツコツ、と、目の前の鉄の壁から、かすかな音が聞こえてきた。
それは後部座席から、壁を叩く音だったのだ。
自分はウォーカーの操縦士。たった一つ箱船が残されたのなら、
残された生き物も、その箱船の中にいるのは当然だった。
『彼』は、積み荷の兵士なのだ。

操縦席と、後部の兵士が乗り込むためのスペースは、鉄の壁で遮られている。
お互い顔は見えなかったが、通信機などなくても声の届く範囲ではあった。
「....生きててくれてよかった。俺は、ひとりぼっちじゃ生きていけないさみしんぼでね」
「.....」
「チッ、爆発の衝撃で反重力ユニットがぶっ壊れちまったみたいだ。
 さっさとずらかろうと思ったけど、浮けないんじゃただの固い箱だな....」
「.....」
「.....実は、俺、こういう事態を予想しててさ。
 操縦席の下に、予備のレーションをためこんでるんだ。
 ま、ひっくり返されて....って想像してたが、頭がちゃんと空を向けてるのが、不幸中の幸いだぜ」
「.....」
「.....
 ......
 .......なァ!アンタの方には、備蓄食料の箱があったよな!」

「大丈夫。僕は死なないよ」

聞こえていないのかと思って少しずつ声を張り上げはじめていた所だったが、
意外にも普通の声の大きさで返ってきたので、少し拍子抜けしてしまった。
「そりゃ結構。俺は生きて帰るんだ、家までつき合ってくれよな。
 .....全く、口がきけないのかと思ったぜ」
「.....」

ふと彼は、後部座席の彼が何者なのか知らないことに気がついた。
いろいろと『不慮の事態』が重なったから、今では誰が残っていて、
誰がウォーカーとともに生き埋めになったのか、正確なところは分からなかったのだ。
「俺はキッシュ。
 キッシュ・C・キルシュヴァッサーだ。
 CはカトラリーのCだ.... 笑っちまうよな、今は皿すらないってのに」
「......」
「Hey、ジャック!アンタの名前は?」
防衛軍では、名前の分からない者には『ジャック』と呼びかける習慣があった。
しかし、彼からの答えは、しばらく経っても帰ってはこなかった....
ただコツ、コツという音が聞こえるだけで。
「.....そうか。なら勝手に呼ばせてもらうよ。
 しばらく一つ屋根の下で暮らすんだ、愛想くらいよくしてくれよな
 ....ええと、ジャック。」


ジャックは無口だった。
常に彼は壁を叩く音を立てていたが、他の物音はキッシュの口から発せられる言葉しかなかった。
こちらは、何か話していないと気が気でなかったのだ。
彼はおしゃべりだったから。

「何で俺が命令に従わなかったか気になるだろ?
 ....俺の兄貴が、空軍でパイロットをやってたんだ。
 3週間前に死んだ。
 兄貴は自分のヒコーキに夢中でさ..... 名前までつけて、
 まるで恋人みたいに可愛がってたんだとよ。
 .....同じ部隊の奴が言うには、
 その恋人が撃たれたとき、一緒に地面に叩き付けられるまで
 ずっと喋ってたんだそうだ.....
 『何もしてやれなくてごめんな』
 『お前のこと好きだった』
 『愛してる』  ってな。
 結局、最期の言葉は『彼女』の名前だった」 


「兄貴は超がつく程の付き合い下手で、
 弟の俺にさえ、自分から話しかけてきたことなかったんだぜ」

「思い出したらアホらしくなってきてさ。
 俺は別にこのクズ鉄みたいな箱に名前なんて付けてないし、
 愛してる訳でもない。
 こいつと一緒に天国に行くなんて、絶対にお断りだね。
 俺は生きて帰って、兄貴の墓に向かって
 『機械と結婚できてうれしいか、バカヤロウ』って言ってやるんだ。
 ま、兄貴は彼女と一緒に燃え尽きちまったから、墓なんざただの箱なんだがな。
 このウォーカーと同じだ」

壁からの音が止み、代わりに声が聞こえた。
「名前は?」
「何?.....兄貴か?シュヴァ....」
「違うよ。その『彼女』のさ」
「ああ....忘れちまったよ。
 おいジャック、アンタが生きててくれたのはうれしいが、何考えてるのか分からない事と
 めったにしゃべらないのは参っちまうな。
 たまに相づちくらいは打ってくれないと、機械と勘違いしちまいそうだぜ」
ためいきを吐きながら、キッシュは付け足した。
「思い出したら教えてやるよ」




しばらく会話のなかった二人だが、
キッシュは『彼女』の名前のかわりに、新しい話題を始めた。
「考えてみりゃ、機械どもと俺たちなんて、
 戦争やってる当の原因の奴ら.... 将軍殿なんかから見りゃ、似たようなモンなんだろうな。
 ウォーカー一台一台には番号しか振ってないし、
 兵士の名前なんざ奴らはこれっぽっちも覚えてないんだろう。
 上から見た俺たちは、単なる戦争の道具に過ぎないんだ」
「....世界を救う『道具』、か」
その言葉は、何とも言えない声色だった。
「お、何か言いたげだな。話してみろよ」
「名前があるのは、真に愛されているという証明だよ。
 少なくとも『彼女』は、君のお兄さんの前では、道具ではなかったんだ。
 ここでは彼女より立場が下なんだ。君も、『彼』も」
キッシュはその言葉に、ジャックはこのウォーカーも含めているのだ、と悟った。
「アンタもな。こいつはいいや、ジャック。アンタも擬人化趣味があるってのか?
 だがな、このポンコツと俺たち二人には決定的な格差があるんだぜ。
 分かるか?」
「....」

「俺たちにはもう名前がある。愛される資格があるのさ!」

「僕も.... それを持ってるんだろうか」
「当然だろ。あいにく俺のところにはもういないが、
 きっとアンタの故郷では、おふくろか親父か、あるいは兄弟が、
 アンタの帰りを今か今かと待ってるんだ。そうだろ?
 俺たちが『道具』なのは、戦場にいる時だけさ。
 ....外の様子が落ち着いたら、通信機を修理して救援を呼ぶんだ。
 周りの敵は尊い犠牲のおかげで灰になっちまったらしいから、帰りは安全だろう」

「お互い生きて帰ろうぜ、相棒。
 アンタの名前を知ってる人たちのためにもな!」

ジャックは返事を返さなかった。
話しているうちに夜になってしまったので、キッシュは彼が眠ってしまったのだと思う事にした。
そういえば、アンタの名前は何て言うんだ?と、彼はもう一度聞いておいたが、
結局壁の向こうからは何も聞こえなかった。

そうして一日が過ぎた。




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※人物紹介
キッシュ・カトラリー・キルシュヴァッサー
 ウォーカー(重戦車)操縦兵。『生きる事』に執着を持つ一般兵士。
 おしゃべりな性格なので、何かと口を動かしていないと落ち着かない。
 あと、ヒコーキラヴな兄貴とは正反対で『機械は単なる道具』としか見ていない。
 ちなみに兄貴は空軍中尉だった。
 「なァ」という微妙なアクセントのついた呼びかけ以外、似ていると言われた事はない。
 わりと堅実な性格。

ジャック
 『ハイジャック』という言葉は、初めてそれが行われたとき、
 犯人が操縦席に『Hey、ジャック!』と呼びかけたのが由来だとか何とか。
 ちなみにカートゥーンネットワークの名作『サムライ・ジャック』の主人公も
 名乗らない彼がそのへんの若者に「ヘーイ、ジャック!」と呼びかけられたからで....(以下略
 ちなみにあの『ティッシュ配りの青年』の本名もジャックだが、とことん呼ばれない。
 本編では絶対に呼ばれない(しかも名乗らない。)

防衛軍&魔王軍
『彼女』
 そのうちキッシュがしゃべります。

ウォーカー
 防衛軍がなけなしの資金と技術で作った兵器、というか、
 壊れやすい防衛軍の科学兵器を戦場へ持ち込むためのとっておきマシン。
 正式名称『100式無輪駆動重戦車』。でかいティッシュの箱みたいな、超装甲のF-ZEROマシンみたいなもの。
 浮いてるのでどこでも進めるが、浮いてるのでコケやすい。
 そしてコケたら2度と戻れない。 コケるなんて誰も想像してなかった。
Secret

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